長野の新しい食の魅力を、
〈善光寺〉門前の古民家から発信

HAKKO! STORY 003

味噌、酒、漬物、長野県は発酵だらけ

長野県のイメージというと、スキー、山登りなどの観光レジャーをつい連想してしまうけれど、食の魅力もたくさんある。特に、味噌、酒、漬物などの発酵食品の生産量は高く、長野は豊かな発酵文化を持つ県だ。

例えば関東ではおなじみの「信州味噌」は、シェア46パーセントで全国一の生産量を誇る。日本酒の酒蔵数は70蔵以上あり、新潟に次ぐ第2位。そしてワイナリーの数も山梨の次を行き、こちらも第2位。りんごがたくさん採れるため、最近はシードルの生産も増えている。また、野沢菜漬けも長野が誇る代表的な漬物だ。〈野沢温泉村〉発祥の野菜、野沢菜を寒い冬の間、塩漬けにして、乳酸発酵させた郷土食である。

古き良き味わいを残したまま、古民家をリノベーションした店舗。

ふらりと立ち寄りたくなる、レストラン

JR長野駅からまっすぐに伸びる、〈善光寺〉の表参道沿いに、そんな発酵食品にフィーチャーした新感覚のレストランが2019年オープンした。〈HAKKO MONZEN〉は、同県の山ノ内町・湯田中温泉に2016年4月にオープンした〈HAKKO YAMANOUCHI〉の2号店である。

築100年を超える建物は、大正時代の足袋屋をリノベーションしたものだ。「発酵イズム」と書かれたネオンサインがピカピカ光り、インパクトがある。夕方には閉まってしまう店が多い中、ここはランチに加えてディナーも提供しており、ファミリーでも、ひとりでも、カジュアルで入りやすい雰囲気がある。

天井が高く、開放的な店内。モダンなインテリアが印象的。

「発酵イズム」の文字が光る。

長野の中心で、地域の発酵食文化を発信

オープンのきっかけについて、〈HAKKO MONZEN〉の広報を務める、波多腰遥さんに伺ってみた。

「元々1号店は、スノーモンキーと呼ばれる、温泉に入る猿が有名な同県の山内町で、地域活性化のためにつくられた店でした。その店のコンセプトを決めるとき、周囲に味噌やビールの醸造所があり、地域資源として共通したものが発酵だったのです。

3年経って店も安定し、町に活気が戻ってきた頃、長野の顔とも言える〈善光寺〉の門前に空き物件を見つけました。そこで今度は長野の中心地で、発酵をテーマに地域の食文化の発信を行えればと思いました」

料理の食材は、長野の発酵食品や、県内の農家が育てた野菜などが中心。メニューの開発と調理を担当しているのは、店長でシェフの白倉敦史さん。和食ベースだが、程よく捻りを入れ、驚きや発見をもたらすような料理を心掛けている。

白倉さんは長野出身だが、発酵食品について以前はそれほど詳しくはなかった。1号店でシェフを任されたことをきっかけに、独学で発酵の知識を深めていったそうだ。

「小泉武夫先生や、小倉ヒラクさんの本などを読んで、ひたすら勉強しましたね。長野のすんき漬けや、キノコを発酵させたこともあります。知れば知るほど、発酵は奥が深くておもしろいです」

〈善光寺〉近辺には、老舗の味噌や鰹節の名店があり、調味料はできるだけ地域のものを使って提供しているそうだ。食べることで長野の食材に興味を持ってもらい、自宅の食卓に取り入れるヒントにもなればいいと考えている。

店長でシェフの白倉敦史さん。映画にもなった『深夜食堂』が大好きで、おいしいものをさりげなく出せるような料理人に憧れているそう。

味噌、醤油、醤油豆、酢など。

奥深い旨味が特徴「醤油豆」

長野の珍しい発酵食品のひとつ「醤油豆」がある。黒豆麹と米麹を醤油で漬け込んだ「醤油豆」は、食べ始めると癖になるおいしさ。〈HAKKO MONZEN〉では、ポテトサラダに混ぜるなど「醤油豆」を料理のアクセントとして使っている。

「長野の人にとって、醤油豆は日常的な発酵食品。けれど、そういう身近な食材を、ちょっとしたアイデアとセンスで、一味違った料理として楽しめることを紹介していきたい」(白倉さん)

「しいたけのグリル 生ハムと醤油豆のせ」。

味噌、魚醤、発酵バター、酢、ヨーグルトなど発酵食品たっぷり。「HAKKOスパイスカリー」。

発酵食品の魅力、長野の食文化を伝えたい

〈HAKKO MONZEN〉は9月にオープンしたばかり。スタッフは10代20代の若い世代が多く、発酵食品に関して勉強中の人も多い。そのため、どうやって発酵の魅力をお客様に伝えていくかという課題も生まれている。

「絵本のような、分かりやすいフリーペーパーの製作を検討中です。発酵食品は良いものだと思っている人が多いけれど、製造方法や歴史、文化は知らない人が多いと思うので」(白倉さん)

「これからはイベントや、物販も広げていきたいです。生産者とのコミュニケーションや、現地を訪ねて一緒に収穫や醸造の体験など、学びの場をつくってみたい」(波多腰さん)

台風19号の影響を大きく受けた長野のりんご畑。県内では復興に向けた活動が始まっている(写真はイメージ)。

発酵食品を使って、さまざまなメニューを開発している白倉さんと、それを支える波多腰さん。おふたりに、今秋発売された「発酵BLENDりんご酢&『カルピス』」を飲んでもらうと「『カルピス』と、りんご酢、発酵しているもの同士の組合せだから、発酵BLENDなんですね。りんご酢の酸味が『カルピス』と混ざり合うことで、まろやかになって飲みやすい」(白倉さん)「長野のりんごが『カルピス』の商品に使われているのがうれしいです。仕事の合間に、スタッフたちと一緒に飲みたい」(波多腰さん)という感想が返ってきた。

「発酵BLENDりんご酢&『カルピス』」のりんご酢に使われている、「シナノスイート」。

左から、白倉さん、波多腰さん。

白倉さんは「すでにお店で発酵カクテルを提供していますが、今後は『カルピス』に、エルダーフラワーなどをブレンドしたオリジナルカクテルなどもつくってみたいです」とのこと。〈HAKKO MONZEN〉から、これからどんなメニューが生まれていくのか楽しみだ。

information

HAKKO MONZEN

address:長野県長野市東後町16-1-1F
tel:026-266-0909
web:https://www.facebook.com/hakko.monzen/