炊いたご飯に米麹を加えてつくられる「甘酒(麹甘酒)」。含まれる成分のうち、20%以上がブドウ糖のため、自然な甘みを味わうことができます。また、味わいだけでなくブドウ糖や必須アミノ酸、ビタミンB群など、私たちの身体に必要不可欠な栄養素を含みます。これらの成分は、麹菌や麹菌の酵素の働きによりつくり出されるもので、病院で使われる点滴の成分と似ていることから、甘酒は「飲む点滴」ともいわれています。
一説によると甘酒のルーツは、日本最古の正史「日本書紀」(720年)に登場する「醴酒(こさけ)」、「天甜酒(あまのたむさけ)」といわれています。そこには、15代天皇の応神天皇に献上されたという醴酒と、天孫降臨で知られるニニギノミコトの子を生んだコノハナサクヤヒメが出産祝いにつくったとされる天甜酒についての記述が見られます。
「甘酒」という言葉が登場するのは江戸時代に入る前のこと。「易林本節用集(えきりんぼんせつようしゅう)」という国語辞書に、「醴」と「甘酒」は同じであるという記載があります。それ以降、甘酒は「甘酒」「醴酒」「醴」として江戸時代の料理本や辞典、俳句などに多く見られるようになりました。
江戸時代中期になると、甘酒は飲む以外にも料理やお菓子づくり、さらには醤油づくりにも活用されるなど、用途が拡大。江戸後期、江戸市中には甘酒を販売する店や甘酒売りが増え、冬に飲まれていた甘酒が通年で販売されるようになりました。特に需要が高かったのが夏場。夏バテ防止に“栄養ドリンク”として飲まれ、「あまい、あまい、あまざけ~」と客を呼ぶ声は夏の風物詩に。その名残として俳句の「現代季語辞典」にも、甘酒は夏の季語として記されています。
現代の甘酒には、米麹を原料にしたもの(麹甘酒)と、酒粕を原料にしたもの(酒粕甘酒)の2つがあります。前者は炊いたご飯(またはおかゆ)に米麹と水を混ぜて発酵させたもの。後者は、古くは糟湯酒(かすゆざけ)と呼ばれるもので、搾った日本酒の粕、つまり酒粕に砂糖と水を加えたもの。
麹甘酒はノンアルコールなのに対し、酒粕甘酒は酒粕自体にアルコールが含まれるため、甘酒にも少しアルコールが残っています。
甘酒は原料の違いによって、大きく2種類に分類されます(中には米麹と酒粕の両方を原料にしたものもあります)。
日本の伝統的な発酵食品である甘酒ですが、世界にも甘酒に似た発酵食品があります。調味料のように使われていたり、デザートとして食べられていたりするものも。世界にもある甘酒のなかまをご紹介します。