発酵にまつわる基本的な情報。
発酵食品の分類と微生物について解説。
発酵とは、微生物(乳酸菌、麹菌、酵母など)のはたらきによって食物が変化し、人間にとって有益に作用すること。反対に、有害な場合は腐敗となります。発酵は食物のおいしさや栄養価、保存性を高めるだけでなく、腸内環境の改善や抗酸化作用など、健康効果をもたらします。
私たちが普段口にしている発酵食品は、食べもの、飲みもの、調味料に分類されます。また、古くから日本でつくられてきた発酵食品もあれば、海外由来のものもあります。
漬け物(ぬか漬け、すぐき漬けなど)、納豆(糸引納豆、塩辛納豆)、鰹節(枯節)、塩辛、豆腐よう、なれずし、くさや、魚の糠漬けなどの保存食、素材のうまみを引き出した食品がある。
日本酒、ビール、ワイン、焼酎、泡盛、梅酒などのアルコール飲料のほかに、甘酒、お茶(紅茶、烏龍茶、プーアール茶、阿波番茶、碁石茶など)、カルピス®などの乳酸菌飲料がある。
醤油、魚醤(しょっつる、いしる、いかなご醤油など)、味噌、酢、本みりん、麹(塩麹、醤油麹)、酒粕、醤、かんずりなど和食はもちろん、さまざまな料理に使える調味料がある。
いぶりがっこ(秋田)、くさや(東京・伊豆諸島)、なれずし(滋賀、岐阜、和歌山など)、かぶら寿司(石川)、へしこ(福井)など、発酵食品は地域の伝統食として長く受け継がれている。
パン、チーズ、ヨーグルト、発酵バター、チョコレート、キムチ、アンチョビ、生ハム、バルサミコ酢、豆板醤など、現代の日本人の食生活に浸透している海外由来の発酵食品や調味料も多い。
参考:『すべてがわかる!「発酵食品」事典』(小泉武夫・金内 誠・舘野真知子監修、2013)
『図解でよくわかる発酵のきほん』(舘博監修、2015)/カルピスに受け継がれる、遊牧民族の発酵健康ドリンクの系譜(小倉ヒラクさんのブログ https://hirakuogura.com/ より、2017)
発酵を促す微生物は大きく「カビ」「酵母」「細菌」の3つに分けられます。カビの胞子や酵母、細菌の細胞は、いずれも10μm(マイクロメートル)以下と小さく、目には見えませんが、彼らのはたらきなくしては、発酵食品は生まれません。ここでは私たちの身近な発酵を促す微生物である、麹菌・酵母・乳酸菌・酢酸菌・納豆菌について紹介していきます。
カビは、さまざまな形態や機能を持つ糸状細胞の微生物。胞子を飛ばして拡散し、菌糸と呼ばれる糸状の細胞を伸ばして広がります。
味噌や醤油などの発酵調味料づくりに欠かせない「麹菌」も実はカビの一種。ほかにブルーチーズで知られる「青カビ」、かつお節をつくる際に使われる「カツオブシカビ」などがあります。
酵母は球形や楕円形をした単細胞の微生物。出芽によって増殖します。
酵母はアルコールをつくるときに欠かせない菌で、お酒の種類によって「ビール酵母」「ワイン酵母」「清酒酵母」などがあります。また、パンが膨らむのも酵母(イースト)のはたらきによるものです。
細菌は単細胞の微生物で、カビ菌、酵母と比べて最も小さな微生物。細胞分裂を繰り返して増えていきます。
発酵食品をつくる細菌の代表例が、カルピス®やヨーグルトなどに用いられる「乳酸菌」、お酢づくりに欠かせない「酢酸菌」、納豆を生み出す「納豆菌」です。
発酵や発酵食品にまつわる基本的な疑問。そもそも発酵食品の何がいいのか、発酵と腐敗、熟成の違い、麹と糀の違いについてなど、発酵学の第一人者である小泉武夫先生に教えてもらいました。