発酵のぎもん

発酵するとなぜおいしくなるの?

味噌や醤油、酢などの発酵調味料に、納豆や漬物、パン、チーズ、ヨーグルトなどの発酵食品はいずれも体にいいことで知られています。それは食品を発酵することで、栄養価や健康調節機能が大幅に上がるからです。また、発酵することで風味が向上し、おいしくなるといわれています。それはなぜなのでしょうか?

うま味がアップする

発酵調味料や発酵食品のおいしさの秘密は「うま味」成分にあるといいます。味覚の基本五味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)の一つであるうま味は、日本人が定義した味わい。食材を発酵させる過程で生成される、アミノ酸の一種であるグルタミン酸や、核酸の一種であるイノシン酸などがうま味成分の正体です。

例えば、味噌の発酵について考えてみます。原料である大豆にはたんぱく質が豊富に含まれていますが、たんぱく質にはほとんど味がありません。発酵すると麹菌の働きによってたんぱく質が分解されて、グルタミン酸が生まれ、うま味となるのです。

独特の香りが生まれる

納豆や魚醤、チーズ、ワインなどの発酵食品には特有の香りがします。これらはいずれも原料の時(大豆や魚、牛乳、ぶどうなど)にはなかった香りで、食材が発酵する中で微生物によって生み出される香気成分によるものです。

例えば、ヨーグルトやチーズは牛乳に含まれる乳糖を乳酸菌が分解し、乳酸や酢酸など爽やかな酸味を生み出しています。また、パンづくりの過程で香る食欲を刺激するいい香りは、パン酵母が小麦粉などに含まれる糖分を分解する際に生まれるものです。

発酵食品がおいしい理由は、微生物のおかげ

発酵食品をおいしいと感じるのは、発酵過程で微生物が「うま味成分」や「香気成分」を生み出しているから。発酵前よりもうま味や香りがアップする発酵食品をぜひ上手に取り入れて入れてみましょう。

監修:小泉武夫(こいずみたけお)
1943年福島県の酒造家に生まれる。農学博士。東京農業大学名誉教授のほか、全国の大学で客員教授を務める。専攻は醸造学・発酵学・食文化論。食にまつわる著書は140冊以上。国や各地の自治体など、行政機関での食に関するアドバイザーを多数兼任。発酵文化の推進ならびにその技術の普及を通じてさまざまな発展に寄与することを目的とした「発酵文化推進機構」の理事長も務める。 発酵文化推進機構公式サイト