長野の新しい食の魅力を発信する、
〈善光寺〉門前の古民家レストラン
〈HAKKO MONZEN〉@長野市

posted:2021.8.20

〈HAKKO MONZEN〉ってどんなお店?

〈HAKKO MONZEN〉は、長野市にある〈善光寺〉の表参道沿いにある創作レストラン。大正時代の足袋屋をリノベーションした古民家で、信州の発酵食品にフィーチャーしたメニューを展開しています。店内には「発酵イズム」と書かれたネオンサインがピカピカ光り、インパクトがあります。

長野電鉄権堂駅から歩いて5分ほど、JR長野駅からだと歩いて20分ほど、夕方には閉まってしまう店が多いなか、ここはランチに加えてディナーも提供。ファミリーでもひとりでも、カジュアルで入りやすい雰囲気があります。

こだわりのイッピン

人気メニューのひとつが「発酵カレー」。玉ねぎの甘みをベースに数種のスパイスと、味噌、魚醤、発酵バター、酢、ヨーグルトなどの発酵食品の組み合わせでつくられています。その時々で使用するスパイスや発酵食品が変わるため、毎回味わいが異なるのが魅力です。

ほかにも、塩麹に漬け込んだ「信州ハーブ鶏」の唐揚げに特製えのきビネガーソースをかけた一品や、信州産の玄米を食べて育った「信州米豚」を酒粕で漬けてじっくり焼き上げた品、地元の納豆屋さんの「納豆とチーズの春巻き」、お店の近所にあるかつお節屋さんのカビづけかつお節を使用した「バター醤油ポテトフライ」など、オリジナリティにあふれたメニューがたくさんあります。

長野の珍しい発酵食品「醤油豆」を使ったメニューも。黒豆麹と米麹を醤油で漬け込んだ「醤油豆」は、食べ始めると癖になるおいしさです。〈HAKKO MONZEN〉では、ポテトサラダに混ぜるなど「醤油豆」を料理のアクセントとして使っています。

「長野の人にとって、醤油豆は日常的な発酵食品。けれど、そういう身近な食材を、ちょっとしたアイデアとセンスで、ひと味違った料理として楽しめることを紹介していきたい」とオーナーの君島登茂樹さんは話します。

「しいたけのグリル 生ハムと醤油豆のせ」。

デザートやドリンクも発酵食品を使ったものばかり。ほのかに感じる酒粕が絶品な「酒かすチーズケーキ」や、意外な組み合わせの「ふきみそチョコブラウニー」、自家製レモンシロップでつくる「豆乳糀甘酒レモン」や麹スピリッツベースの「ゆず麹サワー」など、嗜好を凝らしたメニューがあります。

どんな発酵?

食材は、長野県内の農家さんが育てた野菜と信州の発酵食品が中心。南北に長い長野県では、土地ごとにさまざまな野菜が収穫できるため、新鮮な野菜が豊富に手に入るそう。そして、毎朝仕入れた野菜に合わせてメニューをつくります。生・焼き・茹でなど素材ごとに適した調理方法で、和食をベースに程よくひねりを入れ、驚きや発見をもたらすような料理を心掛けているといいます。

日本の味噌全体のシェア46パーセントで全国一の生産量を誇る「信州味噌」をはじめ、長野県には発酵食文化が伝統的に根づいています。日本酒の酒蔵数は約80を数え、新潟に次ぐ第2位。そしてワイナリーの数も山梨の次をいき、こちらも第2位。リンゴがたくさん採れるため、最近はシードルの生産も増えています。また、野沢菜漬けも長野が誇る代表的な発酵食品です。

お店のある〈善光寺〉近辺には、老舗の味噌蔵やかつお節の名店があり、調味料はできるだけ地域のものを使っています。食べることで長野の食材に興味を持ってもらい、食卓に取り入れるヒントになれば、という思いからです。

醸す人

〈HAKKO MONZEN〉は、同県の山ノ内町・湯田中温泉に2016年4月にオープンした〈HAKKO YAMANOUCHI〉の2号店です。

「もともと1号店は、スノーモンキーと呼ばれる温泉に入る野生の猿が有名な山ノ内町で、地域活性化のためにつくられた店でした。その店のコンセプトを決めるとき、周囲に味噌やビールの醸造所があり、地域資源として共通したものが“発酵”だったのです。日本有数の外国人観光地として国内外からたくさんの観光客が訪れる場所で、信州発酵文化を世界へ発信したいという思いから店名が決まりました」(君島さん)

その後、長野の顔とも言える〈善光寺〉の門前に空き物件が見つかり、今度は長野の中心地で発酵をテーマに地域の食文化の発信を行うことになったのです。

長野市出身の君島さんは、古民家や地産食材といった地域資源を活用した複数の店舗をオープンしてきました。これまでに広げてきた生産者とのネットワークを生かして、生産者こだわりの食材を積極的にメニューに取り入れています。

「長野県内には発酵食品に加えて、信州ならではの魅力ある食材がたくさんあります。野菜や果物の農家さん、食品加工メーカーといったつくり手の方々とともに、信州に暮らす人はもちろん、観光で訪れる人にも信州の魅力を深く伝えていく役割として、お店づくりをしています」(君島さん)

生産者と関わることのできるイベントも

〈HAKKO MONZEN〉では、生産者や食の現場を身近に感じられる体験づくりにも力を入れています。これまでに農家さんをゲストに招いたトークイベントや、クラフトビールの蔵元をゲストにクラフトビールを楽しむ会などを開催しています。

「発酵食品は身体に良いものだと思っている人が多いけれど、若い方を中心にそのレシピや使い方を知らない人が多いと思います。提供するメニューやイベントを通じて発酵食品を身近に感じてもらいながら、簡単な生活への取り入れ方を伝えていきたいですね」(君島さん)

また、オーガニックや減農薬などの生産者と、自分で選択して買いたい生活者をつなぐマーケットを企画。長野市街地にある複数の店舗の軒先などを使って、街を巡りながらよりより食材と出会える機会づくりにも取り組んでいます。

長野駅前~〈善光寺〉門前エリアの店舗軒先や店内を利用した点在型の「シーソーマーケット」。

信州で育まれてきた発酵食品と、県産食材をアレンジした創作料理を楽しめる〈HAKKO MONZEN〉。古き良き味わいを残したままの外観とモダンなインテリアが印象的な店内が見事にマッチした空間は、とても居心地のよいものです。ふらりと立ち寄って発酵のパワーを感じてみてはいかがでしょうか。

※本記事は2021年8月現在の内容です。最新の情報はお店のホームページをご確認ください。

information

〈HAKKO MONZEN〉

address: 長野県長野市東後町16-1-1F
営業時間:11:00〜14:30(LO)、18:00〜21:30(LO)
定休日:月曜日、日曜日ディナー
https://www.instagram.com/hakko.monzen/

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