「発酵卵」を中心に、
心と体が喜ぶ料理を提供
〈発酵薬膳&カフェ Kawasemi〉@大阪・城東

posted:2022.6.3

〈発酵薬膳&カフェ Kawasemi〉って
どんなお店?

〈発酵薬膳&カフェ Kawasemi〉は、大阪の中心地から少し離れた、静かな住宅街の中にひっそりとたたずむカフェ。社会福祉法人〈そうそうの杜〉が運営しています。古民家風の外観に、木の質感が心地よい、ナチュラルで落ち着いた雰囲気の店内。草花に囲まれた庭にはテラス席もあるので、天気のいい日は外でのんびりくつろぐこともできます。

医食同源、心と体にうれしい料理を提供することがコンセプト。奈良県でつくられている「発酵卵」を中心に、素材を吟味して選んだ野菜や調味料を使い、薬膳の考え方をベースにメニューを組み立てています。自家農園を持ち、一部の野菜は自分たちで育てたものが使われています。

こだわりのイッピン

ご近所の方はもちろん日頃の疲れがたまっている人、体のケアをしたい人、発酵食品好きな人など、お店を目指して遠くからもお客さんがやってきます。特にみんなのお目当ては人気のランチメニュー。

この日のメインは「ゆで豚と温野菜の甘みそソース」。みそ汁には季節の野菜がたっぷり

「本日の日替わりご膳」はバランスよく工夫の凝らされたメニューで、色とりどりの野菜がたっぷり。目にもお腹にも満足感をもたらしてくれます。地域の気候風土を大切に、有機栽培や無農薬の農産物をできるだけ使うようにしており、季節によって内容は変わります。発酵食品は随所に使用され、塩麹や、麹を醤油で漬けた醤(ひしお)などは自家製。それらの食材や調味料については、メニューに丁寧で誠実な説明が記されています。

さて、そのメニューのなかでも、どうしても気になってしまうのが「発酵卵」。この店の看板となる食材です。一体どんな卵なのでしょう。見た目は特に変わったところのない、本当に普通のきれいな卵。割ってみても、それほど大きな違いは分かりません。店では卵かけご飯として提供していますが、生卵が苦手な方には、お願いすれば目玉焼きやスクランブルエッグにもしてくれるそう。卵の販売もしているので、持ち帰って自宅で試すこともできます。

早速食べてみると味わいは比較的あっさり、スッキリとしている印象。卵の生臭みがなく、優しいまろやかな旨みと軽やかさがあります。生卵がダメだという人も発酵卵なら食べられるという人も多いとか。また、発酵卵は栄養バランスが良く、代謝を高め、美容・健康にも効果があるといわれています。さらに肉や魚を卵液に浸すと、油っぽさや臭みをとってくれるそうです。

どんな発酵?

発酵卵は、奈良県にある〈有限会社光明〉でつくられています。秘密はこの会社で独自に開発された、オリジナルのぬか床。ちなみに通常のぬか床は、米ぬかに塩と水、昆布やトウガラシなどを入れて混ぜ、陶製のつぼやタッパーなどの保存容器に詰め、捨て漬け用の野菜くずなどを加えて、乳酸発酵を促します。

ぬかに対して約13〜15%の塩を入れるので、それなりの塩分量があることが普通です。しかし発酵卵のための特殊なぬか床は、なんと塩分ゼロ。その詳しい製法は秘密だそうですが、塩分がないことによって通常のぬか床には存在しない乳酸菌が生息し、その酵素の作用により、卵の栄養素がアップするそうです。熱量は3分の1、脂量は5分の4カットされ、アミノ酸、カルシウムはそれぞれ10パーセントアップしている、という研究機関(株式会社ユニオンバイテック、日本食品分析センター、北陸保健衛生研究所)の調査データがあります。

原料の卵は奈良県特産のブランド卵。大和茶の粉末や魚油を配合したこだわりの飼料で育った鶏の卵「大和なでしこ卵」が使われています。

また、卵の殻まで活用できることも、この発酵卵の大きな特徴。1個分の殻を約300ccの水で沸騰させてつくる「発酵水」は、そのまま飲んでもお茶やコーヒーを入れてもよいそうです。ご飯を炊いたり煮物やみそ汁用にだしをとったり、さまざまな料理に使うことができ素材本来の旨みを引き出してくれます。

料理のほかにも、園芸用に土に混ぜれば土壌を活性化し、また生ごみに混ぜると匂いを抑えてくれるそう。〈発酵薬膳&カフェ Kawasemi〉でもご飯を炊くときはもちろん野菜を茹でたり、だしをとったりほぼ全ての料理にこの発酵水が活用されています。

醸す人

カフェのスタッフのメンバーには、薬膳の専門知識を持っている人もいます。個々が独自に勉強し、お互いに教え合いながら、みんなで料理をつくるのがこのカフェの特徴。自家菜園にもスタッフが時々通って、自分たちで野菜を育てています。スタッフのなかには、ここで働くまでは発酵食品や薬膳をそんなに意識したことはなかったけれど、毎日食べるようになって冷え性が改善された、疲れが残りにくくなった、アトピーがほとんどなくなったなどなど、いつの間にか体の調子が良くなったことを実感している人も多いそうです。

「私たちはできるだけ体に良い素材を使うことを心掛けていますが、ベースは家庭料理で、そんなに難しいことをしているわけではありません。この店をきっかけに発酵や薬膳のことを少しでも知ってもらえたらうれしいし、店の料理を参考にして、家庭の食卓に役立ててもらえたらいいなと思います」(店長)

母体である〈そうそうの杜〉は、「すべての人がその人らしく生き生きと暮らせる地域と社会を創っていく」ことを基本理念に掲げ、障がいのある人が地域で生活し続けることを応援しています。〈発酵薬膳&カフェ Kawasemi〉では、障がいのある人が社会の一員として働ける場所を提供。健康的な薬膳や発酵食を日常に食べることで心身の不調を改善できるのではないか、また高齢者や障がいのある人でもその人らしさを生かし、安心して暮らしていける環境を提供したい、という思いからこの店が生まれました。

グループ店でも発酵料理や
手づくりスイーツを

〈そうそうの杜〉ではほかに、〈ビュッフェレストラン 杜のShokudo〉や〈Lianの杜〉などのグループ店を運営しています。品数の多いビュッフェが人気の〈杜のShokudo〉では、菌活をテーマに美容と健康を考え、発酵食品をふんだんに使った料理を提供。

こちらも野菜たっぷりで、見た目にも楽しいカラフルなメニューばかり。自然なやさしい味わいが好評で、好き嫌いの多い子どもでも喜んで食べてくれそうです。また、ビュッフェ式にすることで、障がいのある人にも働きやすさが配慮されているといいます。

もう一つの姉妹店〈Lianの杜〉は、素材を丁寧に吟味し、保存料不使用の手づくりお菓子を販売しています。甘酒や塩麹を使ったお菓子もあります。種類豊富な動物型のクッキーなど、心がほっこり和むようなかわいいお菓子がいっぱい。南鴫野商店街の中にあり、地元の人々に愛されています。

癒やされる空間で、工夫を凝らした盛りだくさんの料理。食べると心身ともに元気になりそうな〈発酵薬膳&カフェ Kawasemi〉にぜひ行ってみてください。

※本記事は2022年4月現在の内容です。最新の情報はお店のホームページをご確認ください。

information

〈発酵薬膳&カフェ Kawasemi〉

address:大阪府大阪市城東区中央1-6-29
営業時間:11:45~16:00(L.O.)
定休日:日曜・祝日
発酵薬膳&カフェ Kawasemi公式サイト

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