世界初のチョコレート醤油「カカオ醤(ジャン)」が、
ものづくり日本大賞・経済産業大臣賞を受賞

posted:2023.2.10

「チョコレート×醤油」という唯一無二の組み合わせが大きな注目を集め、2021年1月の発売から2週間で3500個が販売された 「カカオ醤(ジャン)」が、内閣総理大臣表彰「第9回ものづくり日本大賞」の『伝統技術の応用部門』で経済産業大臣賞を受賞しました。甘いものが苦手な人や糖質が気になる方へのバレンタインギフトとしても注目されています。

今までにない
全く新しい味わいの発酵調味料

気になるカカオ醬の味は、チョコレートの香ばしい風味を感じながらも、それほどクセは強くなく、ちゃんとお醤油でもあり、自然な甘みと複雑でふくよかな旨みを感じます。カカオをチョコレートと考えるとつい甘いお菓子のイメージが先行してしまいがちですが、豆やナッツ系の素材の一つと考えてみれば、ほろ苦さや香ばしさが調味料として違和感なく馴染むことが分かります。

ペーストタイプと粒タイプの2種類があり、ペーストタイプのものはソースやスープなど液体状のものに溶かし混ぜることができるので、いろんな料理に幅広く使え、プロの料理人からも大いに注目されています。粒タイプはカカオの香ばしさを際立たせ、カリッとした食感が良いアクセントになります。

カカオ醬のお披露目会で提供されたひと皿。ローストビーフ、鴨肉のロースト、白身魚のカルパッチョのソース、サラダのドレッシングに使われたほか、スープ、メイン、デザートまで、全てにカカオ醬を使ったフルコース料理が振舞われた

醤油もチョコレートも同じ発酵食品だった

カカオ醬は、醤油とチョコレート、それぞれの分野のスペシャリストでもある3人の出会いから生まれました。

〈トモエサヴール〉代表のチョコレートバイヤー札谷加奈子さんは、チョコレートの世界的評価基準「インターナショナルチョコレートアワード」の審査員を務め、年間3000以上ものチョコレートサンプルをテイスティングしているというチョコレートのプロ。世界のカカオ生産国へも足繁く通い、カカオの歴史文化や農園の現状などを日本に幅広く紹介しています。生産国を訪ねるツアーも実施しており、毎年ベトナムのカカオ農園を訪れていました。2017年、そこに参加したのが、醤油発祥の地とも言われる和歌山県の醤油蔵〈湯浅醤油有限会社〉の5代目代表、新古敏朗さんでした。

実は発酵食品のひとつであるチョコレート。カカオは、カカオポッドと呼ばれる厚い皮に包まれたラグビーボールのような形をした果実で、半分に割ると中に白いジューシーな果肉と種が入っています。その種の部分がカカオ豆ですが、種と果肉を一緒に木箱などに入れ、バナナの葉で覆うなどし、適切な温度と湿度で数日間発酵させることが、おいしいチョコレートをつくる上での重要な工程となります。

「チョコレートも醤油も発酵食品だからきっと相性は良いはず」と考えた新古さん。「米や大豆に麹菌をつけて味噌や醤油をつくるように、カカオ豆に麹菌をつけたらどうなるのだろう?」という素朴な疑問から、カカオ醬のプロジェクトはスタートしました。新古さん、札谷さん、そしてベトナムにカカオの発酵施設をつくったフランスのチョコレート会社〈エリタージュ〉のCEOアーノード・スタンジェルさんの3人が、ここで奇跡的に出会い、カカオ醬の誕生へと導かれたのです。

ベトナムのカカオ農園にて収穫された様々な品種のカカオたち。カカオはもともとフルーツである

4年の歳月を経て、
試行錯誤から生まれたカカオ醬

〈湯浅醤油〉の醤油は、伝統的製法で大きな杉の木樽に仕込み、自然本来の力に委ねてじっくりと熟成させる天然醸造。そのため開発には長い時間がかかりました。新古さんは毎年ベトナムのカカオ農園ツアーに参加しては、札谷さん、アーノードさんを巻き込み、様々な実験を試みました。最初の実験ではカカオ豆に麹菌はうまくつかず、2年目のツアーで、カカオの果肉を茹でて干すと、麹菌がつくことがようやく分かったといいます。

その後も新古さんの飽くなき探究心は止まらず、大豆の代わりにカカオ豆で醤油をつくったりしたそうですが、どうしてもチョコレートらしい風味が出ません。納得のいく味になるまで、何度も何度も試行錯誤を繰り返し、4年の歳月を経てようやく辿り着いたのは、醤油にローストしたカカオ豆を漬け込み、熟成させるというものでした。

現地で蒸したお米に麹菌をつけたものとカカオを混ぜ合わせ、発酵を試みている様子。白っぽく見えるのが麹菌のついたお米、その中にカカオと塩が混ぜ込まれている(左が新古さん、右奥がアーノードさん)

2018年に行った発酵実験の一つ。フルーツの酵素を使ってカカオを発酵させ、フルーツ醤油をつくれないか?と試作したもの

しかし、醤油ならなんでも良いわけではなく、あれこれ試したところ、金山寺味噌のたまりからできる自社商品〈九曜むらさき〉が適していることが分かったそうです。金山寺味噌とは760年の歴史がある和歌山県の郷土食。3種類の穀物麹に夏野菜(なす、瓜、生姜、シソ)をつけ込む味噌で、冬に食べるための保存食です。それらの野菜のエキスがカカオの味わいとの相乗効果をもたらしているようです。

「世界一の醤油をつくりたい」をコンセプトにものづくりに情熱を傾ける新古さんと、「WOW!と驚きを感じるような他にはない唯一無二のおいしさを求めている」という札谷さん、そして「サスティナブルなチョコレートづくりを目指す」アーノードさん。彼らのとことん突き詰めたこだわりが、この商品の味に反映されています。

〈湯浅醤油〉〈エリタージュ〉〈トモエサヴール〉の3社では、新ブランド〈発酵エレメンツ〉を始動。これからもそれぞれの強みを活かした技術を掛け合わせ、発酵をテーマにした商品を開発・提案していくようです。

今までにない新感覚の発酵調味料。これからの広がりにも期待が高まります。

information

〈発酵エレメンツ〉の〈カカオ醬〉(ペーストタイプ、粒タイプの2種)

価格:140g/1782円(税込)
販売問合せ:
湯浅醤油
https://www.yuasasyouyu.co.jp
0737-63-2267

トモエサヴール
https://tomoesaveur.thebase.in
06-4963-3349