宮城大学食産業学群教授で、発酵・醸造学のスペシャリストである金内誠さん。2022年7月に発売した書籍〈発酵の教科書 微生物のちからと最新の発酵技術まで〉は、発酵の基礎から専門知識、最先端の技術まで、幅広く網羅し、深くわかりやすく解説した、まさに教科書。その金内さんが監修した新刊が、2023年1月に発売されました。今回は「発酵食品」によりフォーカスし、オールカラーで写真やイラストを多く使っているので、見ているだけでも楽しめる、読みやすい内容になっています。さっそくページを開いてみましょう。
最初のページを開いてまず、わっと気分が盛り上がるのが「世界の発酵食品MAP」と「日本の発酵食品MAP」。世界や日本の各地でつくられる、その土地の気候風土に育まれた代表的な発酵食品が、かわいらしい地図とイラストでわかりやすく載っています。よく食べるおなじみのものもあれば、あまり聞きなれない変わった珍味も。どんな味? 匂い? と想像を膨らませながら、ワクワク眺めることができます。
次にページをめくると、今度は全面写真で発酵の現場を訪ねる旅へ。発酵の象徴ともいえる、大きな木桶が真ん中にどーんと鎮座する写真には思わず目を奪われます。いくつかの発酵食品について、その土地にまつわる歴史文化を交えつつ、具体的な製造方法を解説。写真をふんだんに添えて現地のものづくりの様子を伝えています。つくり手の人物写真やコメントもあり、グッと親近感を湧かせます。最初の数ページを開くだけで、魅力的で奥深い発酵の世界へ、みるみる惹きこまれてしまいます。
この本は主に3つの章で構成されています。第1章は「発酵食品って何だろう?」。そもそも発酵とは何なのか? 代表的な微生物の種類と働き、発酵食品が生まれた歴史など、まったくの発酵初心者でも理解しやすいように、イラストや写真、図解などをふんだんに取り入れられ、基礎から丁寧にわかりやすい文章で説明されています。後半では、発酵食品のさまざまなメリット、健康効果や医療・化学分野での活用など、幅広い情報が網羅されています。
そして次章以降では、いよいよ具体的な発酵食品をご紹介。第2章は「日本の発酵調味料を知ろう!」、第3章は「まだある!日本と世界の発酵食品」です。醤油、味噌、酢、みりんなど、日本の調味料はどれもこれも発酵食品ばかり。それぞれの歴史文化や特徴、つくり方など、身近でありながら意外と知らなかった調味料の豆知識が、詳しく細やかで明快に紹介されています。味噌については家庭でつくれるレシピも掲載。そして納豆、漬物など日本の発酵食品から、チーズ、パン、ワインなど世界の発酵食品まで、知っておくべきありとあらゆる発酵食品がぎっしり詰め込まれ、解説されています。
例えば魚醤には、日本ならしょっつる、いしる、いかなご醤油などがあり、世界にはナンプラー、ニョクマム、コラトゥーラなどがあることを、それぞれの特徴を説明しながら一つ一つ紹介。チーズにおいてもフレッシュ、ハード、白カビなど、タイプ別にイラスト付きの具体的な説明があり、食に興味がある人なら誰でも楽しめる内容になっています。ページのところどころには金内さんのユニークで興味深い「発酵コラム」もあり、また一味違った発酵の面白さを引き出しています。
「発酵食品を楽しむ」というタイトルの通り、写真とカラフルなイラストがいっぱいで、ビジュアルを眺めているだけでも楽しく、教科書といいながら絵本のように気軽でやさしい雰囲気。それでいて図鑑や百科事典をほうふつとさせる200ページを超える膨大な情報量に圧倒されます。この本の使い方は自由。最初のページからじっくり読み進めてもいいし、パラパラとめくって気になるページを開き、知りたいところだけさっと読んでもいい。巻末には細かいインデックスがあるので、発酵に関する調べ物をするにも便利です。発酵好きはもちろん、食いしん坊なら是非とも持っていたい一冊! 読めば読むほどますます発酵の面白さにどっぷりハマってしまう、読み応えたっぷりの本です。
A5判・224頁
価格:1,650円
発行:ナツメ社
購入サイト:https://amzn.asia/d/2Mxhw7q